ボストンで出逢ったアメリカ文学

木下 恭子



アメリカの空港に着くと、私はなぜかホッとする。その理由を私なりに考えてみると、アメリカはいろんな「出逢い」を与えてくれるからではないかと思われる。

ボストンはマサチューセッツ州の州都で、その名前を英国の町ボストンからとったもので、町は古さと新しさがほどよく調和した魅力的な姿を旅行者に見せてくれる。観光と語学研修をかねて、予備知識がほとんどない状態で、四年前私はボストンに行った。旅行では案外知識が白紙のままで行って、思いがけない「出逢い」がある。

大学で学んだ専門分野は、社会に出てしまうと、直接関係ないことが多く、日々の忙しさに追われて忘れ去られる場合もある。ボストンに住む人々は、「ボストニアン」と呼ばれ、誇りをもってボストンに住んでいる。ボストニアンには、色々な人々がいて、株など金融関係に関心の高い人もいれば、多くのすばらしい文学者を生み出した土地柄、アメリカ文学に精通している人もいる。私はアメリカ文学に詳しい人に出逢ったことで、コンコードやソローの『ウォールデン』で有名なウォールデン湖へ連れていってもらえる機会に恵まれた。

その結果、大学時代に学んだアメリカ文学がなつかしくなり、詩人ロングフェローが住んだ家やフランクリンの立像、オールコットの家やセーラムにあるホーソーンの七破風の家を訪ねたりして、自らボストンでアメリカ文学の軌跡をたどることに励んだ。アメリカでは、夏休みに家族づれなどが気軽に歴史的な場所を訪れていたのが印象的だった。肩ひじはらずに自然体で、価値のあるものに触れることは子供にとって将来有益なことになるだろう。

短期間の旅行は、精神的にリフレッシュすることができる利点があるが、一ヶ月以上異国の町でそこの住民になったような気分で、環境に溶け込んで、自らの興味のある対象を見ることは、大切なことだろう。

アメリカの西海岸のような明るい雰囲気に慣れた人の中には、ボストンは保守的な雰囲気だから、西海岸の明るさがなつかしいと話す人もいた。でも、ボストンは私のお気に入りの町だ。古さを大事にして、新しさも取り入れながら構成された町並は、すばらしいアメリカの建築の美しさが示されていて、旅人の心を魅了する。日中の景色も素敵だが、ライトアップされた夜景の美しさは格別だ。

「出逢い」という言葉こそ、旅を表現する時のキーワードといっていいだろう。

(大学院研究生)

The Chukyo University Society of English Language and Literature
Last modified: Tue May 4, 1999

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